「花のいそぎ」イメージ

バウ・ミュージカル
『花のいそぎ』
作・演出:大野拓史

解説

国史が記録する「明晰な官人」のイメージ、詩歌が物語る「直情的な詩人」のイメージ、歌物語が描く「恋に愁う貴人」のイメージ、説話が伝える「マジカルな超人」のイメージ……。同一人物のものであるとは思われない、幾つもの異なったイメージで知られる、平安初期の世に異彩を放つ人物「小野篁(おののたかむら)」の学生時代を描いた作品。一学生に過ぎない主人公・篁が、学生生活を特徴付ける経験の数々、友情、競争、憧憬、反抗、恋愛などを経て、後の世に知られる小野篁の様々なイメージを身に帯びてゆく姿を軸に、学生達が成長してゆく様を描く。

あらすじ

弘仁13年、夏。中級以下の貴族でも世に出る機会を得ることが出来る数少ない制度の一つ「文章生」の試験に及第し、大学寮文章院の学生となっていた小野篁は、当時の最高権力者、右大臣・藤原冬嗣が催す「探花の宴」に、同窓の学生達と共に招かれる。
「探花の宴」とは、科挙の合格者を招いて唐の宰相宅で行われる祝宴のことで、その趣向は庭園で最も美しい牡丹の花を探す競技「探花」にあった。右大臣は、文章院の学生達と、藤原氏の子弟が学ぶ私学・勧学院の学生達に、その「探花」を競わせようと考えたのである。だが、文章院の学生達は、競技が始まってまもなく、ある事に気付く。庭園の何処にも、まともな牡丹の花がないのである。その理由は、勧学院の学生である右大臣の次男・藤原良房の口から明らかになる。全ては、文章院の学生達を辱めようと目論んだ、右大臣の嫌がらせだったのだ。一門による権力支配を固めつつあった藤原氏にとって、実力で世に出ようとする文章生など、既得権を侵す邪魔者に過ぎなかったのである。しかし、文章院の学生達は、危機に立ち向かう団結と、彼らに同情心を抱いたある娘の協力、そして篁自身が持つある「力」によって、その危機を脱するのだった。

その宴からの帰り道、篁は清原夏野に呼び止められる。宴における文章院の学生達の活躍に好感を抱いた夏野は、息子・清原俊蔭の家庭教師を依頼しようと考えたのだった。
数日後、清原夏野邸を訪れた篁は、そこで意外な人物と出会う。篁が教える少年・俊蔭の姉が、宴の日、同情心から文章院の学生達に協力してくれた娘だったのだ……。真飛聖の、バウホール単独初主演作品。

花組主演男役 | 真飛 聖が当時を語る!

実はこの公演まで、日本物がすごく苦手でした。そのため最初は不安だらけだったのですが、これはきっと「克服しなさい」という神様のプレゼントなんだ、逃げてちゃいけない!と覚悟を決めて向かい合いました。すると演じていくうちに、琴の音色が心に響き、桜の花びらが散るだけで癒され、自然と涙が出てくるように。千秋楽を迎える頃には雅な世界にどっぷり浸っていました。今では日本物が大好き。私を変えてくれた記念すべき作品です。